システムを作るとはどういうことか

システムを作るエンジニアの画像

システムを作る、設計する仕事と言うと、コンピュータなどの情報処理装置上で実現されるシステムの設計、運用、管理に限定される。

その仕事は、日本ではシステムエンジニア(SE)が従事することと認識され、SEは小売業者のための販売管理システムや運輸業者のための運行管理システムなどの設計、製作、運用、管理を行う。

しかし我々が生きている世界を見渡せば、そこかしこにシステムがあり、知的労働者のほとんどがそのようなシステムに関係する仕事をしていることに気づく。

つまり知的労働者は皆、”システムエンジニア”なのだ。

会社システムのエンジニア

会社というシステムを考えてみる。

会社は、その資産や経営陣、そして従業員から成り、一定の物やサービスを提供すると共に、構成員の生活を支えるなどの社会的貢献を行うために機能しているシステムである。更には、株主や所在地や様々な関係する他会社などの外部のシステムと接続し、相互に影響を及ぼし合う開放系システムと考えられる。

この会社というシステムが、どのような人に設計され、製作されたかと言えば、それは普通、会社の創業者である。

会社の設計とは、どのような物やサービスを提供し、そのためにどのように活動するのか、その構成要素たる従業員はどのような就業規則に従うのかを決定していくことである。そしてこのシステムを稼働させるための場所や資金、人員を調達し、実際に稼働させるというのが会社の製作に対応する。

このように作られた会社は、経営陣や総務部などが管理しながら、従業員全体の働きにより運用されていく。

このように一見、エンジニアとは無縁と思われる起業家や総務の人間達でさえ、行っていることはシステムをエンジニアリングすることである。

国家システムのエンジニア

国家もまた大きなシステムにとらえることができるが、その設計書は法律である。つまり国家は、法体系というシステムに規定されるシステムなのだ。

日本の法体系は、明治期に諸外国から取り入れたものや、戦後にGHQによって提案されたものを含むが、現代における法の改変は議員と官僚によって行われている。それゆえ、法体系の設計エンジニアとしては議員と官僚が対応する。

法律の製作や改変は、ある一定の目的を達成するために行われるが、法律を変えるだけでは国家の動作は何も変わらない。それは、その構成要素たる法人や個人が法律改変によりその動作を変えるから、国家の動作が変わるのである。

例えば減税という法律の改変を考えてみよう。議員が絡むと政局の影響などもあるが、おおよそ減税は、消費の増加による経済活動の促進や、法人や個人の資産増加による安定化などを目的として行われる。しかしこの目的の通りに、法人や個人が動くとは限らない。減税により、消費活動が過剰に増加し、逆に貧困層に落ちる個人が増えるという可能性もありうる。

つまり国家をエンジニアリングするためには、その設計書である法律の変化に伴う、経済と人間というよくわからないものの動作変化を予測しなくてはならないのだ。

このように国家というシステムをエンジニアリングすることは、経済や人間を全て理解することと同等な極めて難しいスキームなのである。

システムとして認識すること

このように、全てがシステムであるという抽象視点で世界を見直すと、どんな業務なら情報処理上のシステムに置き換えられるか、またこのシステムならどんなエンジニアリングが必要なのかということが見えてくる。

それは例えば、会社の管理部門の業務はこれから情報処理装置上のシステムに置き換えられどんどん削られていくとか、法律の改変には現状分析と集団心理学と経済学などによる予測が不可欠だとか、そういうことである。
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