スマートフォンが振動する仕組み

振動するスマートフォンの画像

私たちは、スマートフォンの着信音に煩わされることなく、大事な連絡にすぐに気づく。会議中であっても、スマートフォンをこっそりと確認すれば、大事な連絡に適切な対処ができる。それもこれも、スマートフォンの振動機能によって実現されている。

このような振動機能は、触覚を意味する「ハブティクス」と呼ばれるテクノロジーに進化しつつある。ハプティクスは、ユーザーへ力や振動、動きを与えることで触覚を刺激、画面に映る抽象的な動作や質感を、あたかも実体があるかのように感じさせる技術だ。

スマートフォンでは、画面をタッチしたときのクリック感、スライドさせたときの引っかかる感覚などがすでに実現している。しかし、これらの感覚はあくまで擬似的なもので、人間の皮膚感覚の特性と、それを前提とした精細な振動の制御によって生み出されている。

それでは、スマートフォンの振動はどのような仕組みによって実現しているのだろうか?

以下では、代表的な3種の方式、直進的な振動を生み出すリニア共振アクチュエータ(LRA)方式、円運動を生み出す偏心回転質量(ERM)方式、ピエゾ素子を使用したピエゾアクチュエータ方式の振動の仕組みについて解説していく。

リニア共振アクチュエータ(LRA)方式

リニア共振アクチュエータ(LRA)方式模式図の画像
LRA模式図
LRA方式の振動は、電流によって発生した力をバネに加え、バネに蓄えられた力を解放することで発生する。

右模式図のような円柱型のケースに、上から、リングバネ、円状金属片、コイルが同心円内部にあるリング磁石が順に格納されているとしよう。ここで、コイルは電源に接続され、ケースに固定されているとする。また、リング磁石の磁場は、リング内側から出てリング外側に入る、つまりコイルをコイル中心方向に横切る。

ここで、フレミングの左手の法則を思い出そう。コイルに電流を流したとき、磁石には磁場と電流の両方に直角な、金属片方向の力が働く。すると、磁石は金属片をバネ方向に押し、バネが縮んで、力が蓄えられる。そしてコイルの電流を弱めるとバネは蓄えられた力を解放、ケース外側に力が働く。

これを連続的に行うことで、スマートフォンへ振動が伝わる。

偏心回転質量(ERM)方式

偏心回転質量(ERM)モーター用部品模式図の画像
ERM用部品模式図
ERM方式の振動は、形状に偏りのある重りをモーターで回すことによって発生する。

例えば、右模式図のような欠けた円盤を考えよう。円盤を回転させると、中心から外側方向に遠心力が加わる。しかし欠けた円盤の場合、欠けた方向への遠心力はそれ以外に比べて小さく、全体として欠けていない方向に力が加わる。

この欠けた円盤が回転し続けている場合、軸中心から外側へ向けた力が回転するように働く。これが外部に伝わることによってスマートフォンに振動が発生する。

ピエゾアクチュエータ方式

ピエゾ方式では、電圧を加えると機械的に変形するピエゾ素子を用いる。

ピアゾ素子は、全体としては中性だが、細かく見ると電荷分布に偏りのある物質だ。このような物質に電圧を加えると、正の部位と負の部位は逆方向へ引っ張られる。そしてその変化の合計が、ピアゾ素子全体の変形となって表れる。電圧を切れば、変形は元に戻るので、連続的に入り切りすれば、その変形は振動的に振る舞う。

この振動が外部に伝えられ、スマートフォンに振動を引き起こす。

振動方式の比較

この3つの振動方式には、一長一短がある。

応答速度を比べると、LRA方式とERM方式が数10msであるのに対し、ピエゾ方式では1ms以下だ。それは、機械的動作で振動するLRA方式とERM方式に対し、ピエゾ方式はイオンの電場への反応という光の速さで伝わる現象を由来としているからだ。

それゆえに、ピエゾ方式は多様な振動を表現できるという強みも持つ。

しかし、ピエゾ方式は値段が高く、ERMモーターはピエゾ素子の2倍するというのが現状だ。

関連情報

参考:

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