ヒカル いろがさね裏源氏 柏木いづみ 著

ヒカル いろがさね裏源氏
著者:柏木いづみ
出版:文春文庫
発行:2012/02/10
評価:★★★☆☆
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柏木いづみによる『ヒカル いろがさね裏源氏』は、容姿や財力など全てを備えた現代の光源氏、ヒカルを描いた官能大河小説。

幸福設計グループ会長の非嫡子であったヒカルは、父親の愛人である藤江、お抱えの占い師・美羅などと関係を交わす奔放な生活を送っていた。そんなヒカルに舞い込んだ、有力企業の令嬢・葵との婚約話。しかし、葵のヒカル以上の淫蕩さは、導くようにヒカルを波乱の渦に巻き込んでいく…。

あらすじ

幸福設計グループの会長・魁太のその日の仕事は、購入を打診されているエステティックサロンの視察、そして本邦を代表するメガバンク・みやこファイナンシャルグループからの政権与党への政治献金の調整であった。そして仕事を終えた魁太は、みやこの会長秘書・藤江と一時の逢瀬を楽しむ。

しかし藤江は、はるか齢上の魁太によって与えられる悦びに満足しながらも、魁太の息子・ヒカルとも関係を持っていた。藤江は、そのような自身の行為に恐れおののきつつ、背徳感がもたらす悦びをも感じていた。

魁太の非嫡子であるヒカルは、莫大な財力のみならず、容姿端麗でもあり、また色事の才覚までをも兼ね備えていた。それはヒカルの「ただそこにいるだけで、女をその気にさせてしまう」雰囲気と香りゆえであり、またお抱えの占い師・美羅による高校生からの性の手ほどきによるものであった。

そのヒカルに、有力企業の令嬢・葵との婚約の話が舞い込む。しかし葵は、ヒカル以上に性に奔放であり、それによりヒカルは様々な性戯を経験していく。しかしそれが、ヒカルに降りかかる波瀾の始まりだった・・・。

感想

そんな、紫式部の『源氏物語』を下敷きにし、現代に光源氏を甦らせたと主張する小説。

ここからさらに話は展開して、東電OL殺人事件をモデルにしたエピソードが絡んできたり、東京近辺の原発がメルトダウンしたりと、現在日本の出来事を僅かにいじったものを物語の素材にしています。

キャラクターも現実の有名人をモデルにしたものが多く、虐げられる行為が好きな蓮○女史とか登場します。

また本作では、何かと「ハイジニーナ」という下を除毛した男女がたくさん出てきます。著者によると、
ハイジーン(hygiene)は「清潔」を意味する英語で、ハイジニーナは「清潔人」といったところ。欧米では衛生のために陰部の毛を除去することが、男性も女性もいまや常識になっている。近年わが国でも、とくに女性たちのあいだでレーザーやブラジリアンワックスを用いた除毛が流行しつつある。
とのことで、著者自身も除毛済みとのお話です。

しかしこの作品の登場人物は、何かと「ハイジニーナ」、「ハイジニーナ」言っていて、「私はまだだわ恥ずかしい」とか、「うむ、ハイジニーナはなかなか良いな」とかそんな感じで、アホくさと思うことも多々ありました。

ストーリ展開としては、するする読める作品なので一見早いような気もするんですが、なにぶん濡れ場が多いので実質的にはほとんど進行していません。

全体としては、なかなか面白い作品だとは思うのですが、登場人物の知的レベルの低さはちょっと気になりました。もちろん、知的に劣った人々をそれなりに描くのはいいんですが、文中で知的な人物として紹介されたり、エリートとして登場したりするわけですから、その人々を教養のある洗練された人間として喋らせた方がいいんじゃないかと思いました。

東電OL殺人事件:1997年に東京電力の幹部社員であった女性が、東京都渋谷区円山町にあるアパートで殺害された未解決事件で、エリートでありながら、夜は売春を日常的に繰り返していたことが明らかになり、マスコミに大きく取り上げられた。

関連リンク

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ムラサキ いろがさね裏源氏
著者:柏木いづみ
出版:文春文庫
発行:2012/10/10
評価:★★☆☆☆
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