粘膜戦士 飴村 行 著

粘膜戦士 (角川ホラー文庫)粘膜戦士
角川ホラー文庫
(2012/02/25)
飴村 行
★★★☆☆
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『粘膜戦士』は、日本ホラー小説長編賞、日本推理小説協会賞の受賞作家であり、拷問描写と救いようのないブラックジョークが売りのホラー作家、飴村行の初の短編集である。

本作は前3作『粘膜人間』、『粘膜蜥蜴』、『粘膜兄弟』に続く粘膜シリーズ第4作目。

前作と同様に、太平洋戦争期の日本とマレー半島が舞台にし、「爬虫人」なる顔面が蜥蜴の人種、さらには、「河童」や精霊などが出現する。全体として陰鬱でグロテスクな描写が多く、醜く残酷な登場人物が多数出現するが、滑稽な人物描写と悪ふざけが過ぎる発言はかなりおもしろいし、たまに登場する実直・朴訥な人物がちょっとだけ共感できる。


鉄血

ナムールに駐屯する下級仕官が上級仕官に追い詰められ、最終的には殺害する話で、「性の快楽を極めんと驀進し続ける」強欲な上級仕官の妄想話がぶっ飛んでいる。

肉弾

恥辱を晴らす復讐話で、昇進し帰国した尊敬する兄の衆人環視のもとでの恥さらしは強烈である。

石榴

爬虫人も交えた性的に倒錯した家族の話で、主人公へ語られる家族の猟奇的な性の告白は、あまりにも唐突過ぎて少し不自然かもしれない。

極光

拷問話。

凱旋

『鉄血』で上級仕官を殺害した下級仕官が日本に逃げ延びる話。


本作品は短編集であるため、この作家の秀逸な部分である、長編を貫く緻密な構成と大どんでん返しはみられなかった。また、前3作に必ず一人は出現した、極端に暴力的であったり、残酷であったりする“魅力的”な人物が居らず、薄い内容になってしまっている。
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