日常の会話の中で頻繁に行われる幸せ自慢。成人以後の女性に多く、また近年ではSNSという場でも顕著に観察される。
そのような人は、彼氏と旅行に行ったとか、誕生日に高価な物をもらったとか、そのようなことを広がりにくい形で話し、またSNSに華やかで幸せに満ちた自身の生活をさらけ出す。
以下では、幸せ自慢がどのような人々の間で問題になっているのか、幸せをアピールするのはどのような人か、そして幸せアピールをする心理は何なのかを説明していく。
幸せ自慢が問題になる関係性
まずこの幸せ自慢というものには、自慢する人とされる人がいて初めて成り立つものであるという特徴がある。例えば、ある人が大勢の仲間で海にバーベキューに行ったとしよう。この話を聞いた人が一緒にこのバーベキューに行った人であれば、単なる思い出話に過ぎず、ここに自慢など何もない。
一方バーベキューに行っていない人からすれば、知人が自分の知らない人たちともしくは自分以外と楽しそうな時間を過ごした話であって、もし同じ時間の自分が充実した時間を過ごしていないと感じていれば、嫉妬の一つも生まれるかもしれない。
つまりこの幸せ自慢は、互いに共有しない時間があって初めて成り立つものであることがわかる。
これを踏まえると、幸せ自慢というものが、多様なコミュニティに属し始める時期から問題になることがわかる。
中学生くらいを思い出すと、この頃は学校と家庭が全てであり、クラスメートの間にお互いの知らない時間はあまりない。
更にSNSという場の場合、親密な人から、昔親密だった人、ただの知人や、顔を合わせたことのない人まで多種多様な関係性を持った人がいる。
しかし会ったことさえない他人の幸せ自慢が問題になるかと言えば、そういうケースは少ないだろう。むしろ昔親密にしていた間柄で、現在は会うことの少なくなった人々の間とか、片思い的に親密だと思っている人々の間で幸せ自慢は問題になりやすい。
幸せ自慢の男女間の違い
またこの幸せ自慢は女性同士で多く、さらに問題にもされやすい、これは何故だろうか?これを考えるためには、女性にとっての幸せとは何か、男性にとっての幸せとは何か、そして何を羨ましいと思うかの違いを考える必要がある。
女性の幸せに最も重要な因子は人との繋がりである。それは例えば友達だったり、パートナーだったり、自分の子供だったりする。そして女性は同性の幸福を羨む。
一方男性はどうかというと、もちろん人との繋がりを大事にする人も多く、それを羨ましがる人もいるが、能力や権力、そして財力などが周囲よりも秀でていることに幸福感を感じ、またそのようなひとを羨む。実際、どんなに幸福そうな男性でも周囲の男性から出来ないやつだと思われれば、その人間のことは気にも留められない。
そしてこの違いを考慮すると、女性が自分の幸福さを主張する場合には周囲の人々達との出来事を話したり、写真に撮ってSNSに投稿したりする必要があるのに対し、男性の場合は言葉で伝えるようなものではなく、むしろ結果や状況により示すものであることがわかる。
幸せ自慢をする人の特徴と心理
それでは、どのような人が幸せ自慢をするのだろうか?これは会話の中で行われるのとSNS上で行われるのでは性質の異なる部分がある。
会話の中で幸せ自慢をする人
会話の中で幸せ自慢をする人の特徴としては以下が挙げられる。自己顕示欲の強い人
これは当たり前のことだが、他者との会話の中で「自分が自分が」と自分の話をするのだから当然その人の自己顕示欲は強い。空気が読めない人
幸せ自慢になるような話題は、自身の生活の中で特別な時間の話であり、話題にし易いものではある。しかし、ふつう人は他者との関係性を円滑にするために、共通の話題などを見つけて話すことが多い。だが幸せ自慢をする人は、対話的な会話が出来ず、自分の話が周囲の気分を損ねていることに気づいていない。
自己を特別視している人
幸せ自慢をする人の中には、自身のコミュニティでの地位が高いもしくは高いと思っていて、周囲が自分の様々な事を聞きたいと勘違いしているパターンがある。このような人々は、他人が思うほど自分に関心をもっていないことに気づいていない。
他人を貶め自分を上げる人
「あなたたちよりも自分がより幸せだ」ということを、明示的にもしくは言外に含むような形で幸せ自慢をする人は、他人を貶め自分を上げようとする心理がある。ここには、幸せである自分は価値が高いという考えがあり、そして同様な考えを持った周囲の人間は、自分は幸せな事が少ないから価値が低いと思う。
このように、周囲の自己評価を下げることで、自身の価値を上げようという心理がある。
SNSで幸せ自慢をする人
SNSで幸せ自慢する人には、上記の「会話の中で幸せ自慢をする人」の項目に加え、以下の特徴や心理が考えられる。構ってほしい人
自己顕示欲に近い心理だが、常に注目して欲しい、繋がっていたい、それを感じるために「いいね!」やメッセージをたくさん貰いたい。このような心理がSNSで幸せ自慢をする人にはある。出会いが欲しい人
これは何も幸せ自慢に限った話ではなく、SNSに時間を費やす人に多い特徴ではあるが、出会いを求めてSNSに幸せ自慢になるような投稿をする人もいる。ここで投稿内容が幸せ自慢になってしまうのは、SNSの性質上仕方がないことで、自分に抜きんでたコンテンツがない限りは、平凡な生活の中の楽しかった特別なことを投稿するしかないだろう。
巷の意見の分析
この問題、特にSNS上で行われている幸せ自慢については、巷で様々な意見が上がっている。以下では、これを考えていく。本当に幸せな人は幸せのアピールなどしない?
これは人との繋がりとは全く関係ないところで幸福を感じている人にとっては真実である。それは趣味だったり、仕事だったりそういうものである。しかし人との繋がりによって幸福感が左右される人々にとっては、自分の最も重要な話題を話す、またはSNSに投稿するというのは自然で、幸せか否かは関係なく、より幸せになるためにSNSに投稿しているように思われる。
SNSに投稿ばかりしている暇人が幸せなはずはない?
これは全く違う気がする。Facebookなどへの投稿は慣れれば簡単なものだし、年がら年中スマフォをいじっている現代人にとって、その中の何割かの時間をSNSに費やしたって暇人ということにはならないだろう。旅行でSNSに投稿する写真を撮ってばかりで本当に楽しんでいるのか?
SNSに投稿される最も多いコンテンツが旅行へ行った時の写真である。そしてその頻繁さは、「旅行でSNSに投稿する写真を撮ってばかりで本当に楽しんでいるのか?」という疑問さえ呼び起こすほどだ。しかし実際いい大人が、旅行に行っていい景色を見たって、たいした感動なんて起こりはしない。
だが、そういうところへ行って写真を撮ることそのもの、そしてそれを他人に見せること自体を楽しんでいるのなら、それは旅行の楽しみと言ってもいいかもしれない。
幸せ自慢を羨み、ひがむ方が問題なのか?
人間の歴史を見直すと、人の幸福感で最も重要な因子は相対性だということがわかる。つまり、自分の幸福感は他者との比較によって決まってしまうということだ。それは、現代よりも不便で生活の苦しい昔の人たちが、現代人と同じように不幸を嘆いたり、幸福感を感じていたりしていることから理解できる。こんな性質を持った人間が、自分より幸せそうな他者を羨み、ひがむのは当然のことである。だから、自身のこのような感情に落ち度を感じる必要は全くない。
SNSに関する補足情報:
総務省の統計では、2015年のSNSの利用状況はLINE(37.5%)、Facebook(35.3%)、Twitter(31.0%)となっているが、LINEはメッセージアプリの側面が強く、またTwitterは匿名で行うことが多いため(実名利用率23.5%)、幸せ自慢をめぐる問題とは関係が薄いと考えられる。一方、年代別のFacebookの利用率、及び実名利用率は下表。またSNS上でのトラブル経験の有無も共に載せた。【総務省:ソーシャルメディアの普及がもたらす変化】
利用率(%) | 実名利用率(%) | トラブル経験者(%) | |
---|---|---|---|
全体 | 35.3 | 84.8 | 15.4 |
20代以下 | 49.3 | 83.2 | 26.0 |
30代 | 38.3 | 86.9 | 12.1 |
40代 | 36.8 | 89.1 | 14.1 |
50代 | 30.8 | 83.7 | 9.6 |
60代 | 21.5 | 79.1 | 6.5 |