先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発 池上 彰 著

先送りできない日本  ”第二の焼け跡”からの再出発 (角川oneテーマ21)先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発
角川oneテーマ21
(2011/05/10)
池上 彰
★★★☆☆
商品詳細を見る

日本における、政治・経済・産業の解決すべき6つの問題について、コンパクトにまとめられた池上氏による著作。

本書では、日本における政治・経済・産業の問題をどのように解決していくか、問題の背景や原因、さらにはこれからの方向性も含めてまとめられている。国内企業については、失敗や見込みの甘さはあったものの比較的好意的な記述が多い。しかし、政治への意見は厳しい。


1章

産業の観点からのTPP問題。

最初に語られるのは、 日本の通商政策の問題。 国内企業の地位低下の原因として、世界を席巻しつつある韓国製品やオフショアリングの加速による世界的な安さ競争が挙げられている。そして、政治は企業をバックアップするために、TPP参加は必須だというのが池上氏の意見。

2章

日本の農業政策と絡めたTPP。

日本の食糧自給率の低下は避けねばならないが、日本の農業保護政策は失敗だったとのこと。しかし今までもこれからも、企業家精神あふれる農家はたくさんいて、競争のなかでこそ国内農業は強くなるはずだとの意見。

3章

資本主義における競争原理とTPP問題。

保護政策反対の立場から、韓国のグローバル化対応成功の理由や、金融ビックバンにより力をつけた国内金融機関の小話が述べられ、競争原理の是非について議論している。

4章

本章では、中国の横暴っぷりがたくさん述べられる。しかし池上氏は、中国人が悪いんじゃない、あの国家が悪いんだというフォローも忘れず記述。

5章

いかにして日本企業がグローバル化に対応していくべきかという話。

日本の製造業についての記述はおおむね好意的。

面白いものとして、トヨタの小型トラック、ハイラックスの話がある。この車は極めて頑丈で、木にぶつけ、水に5時間沈め、3メートルの高さから落下させ、上からキャンピングカーを落とし、プレハブ小屋に突っ込ませ、火を放ち、ビルの屋上に載せてそのビルを爆破しても、瓦礫から掘り出されたその車は部品交換なしで走るという恐ろしい車らしい。

6章

本章は、高齢化と財政悪化が進展するも何も決定できない政治が主題。

池上氏の意見の概要は、国の借金は限界で、消費税10%なんて焼け石に水でもっと上がるのも我慢すべきとのこと。また、政策よりも政局ばかりを報道するマスコミにも苦言。



しかし池上氏は、この震災をきっかけに日本が良い方向に進むと見ている。それは、危機が政治を動かし問題解決を進展させ、復興需要はデフレ脱却を促す可能性があると考えているからだ。

また、世界でダントツを誇る日本の海外純資産や、震災で見せた日本国民の規律などから、日本国民が問題を解決し、より良い未来を切り開いていけるはずだと、池上氏はエールを送る。
スポンサーリンク
スポンサーリンク