日本の15大財閥―現代企業のルーツをひもとく 菊地 浩之 著

日本の15大財閥―現代企業のルーツをひもとく (平凡社新書)日本の15大財閥―現代企業のルーツをひもとく
平凡社新書
(2009/02/13)
菊地 浩之
★★☆☆☆
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現代にまで系譜が繋がる現代的な視点から選ばれた以下の15大財閥の、勃興から戦後の動向、現在における企業集団の形成までがまとめられた書籍。

  • 三菱
  • 住友
  • 三井
  • 安田(芙蓉)
  • 浅野
  • 大倉
  • 渋沢(第一勧業銀行)
  • 古河
  • 薩州(川崎造船)
  • 川崎金融
  • 山口(三和)
  • 鴻池
  • 野村
  • 旧鈴木
  • 日産(春光(日産・日立))




財閥の中には、三井・住友・鴻池・山口・川崎金融のような江戸時代以来の富商を元にするケースと、明治維新後に勃興したケースがある(三菱・安田・浅野・大倉・渋沢・古河・薩州・野村・旧鈴木・日産)。これらの中でも、三菱の創業者である岩崎弥太郎は、あまりにも有名だし、渋沢栄一は、東京海上・京阪電鉄・東証など現在に連なる企業を次々と設立した日本資本主義の父である(渋沢栄一が創設した企業群をこの本では便宜上、渋沢財閥と呼ぶ)。

財閥は本来「同一家族が経営する巨大企業の連合体」だが、戦後のGHQによる財閥解体後は、旧財閥系企業集団と呼ばれる三菱・三井・住友グループと、新興系企業集団と呼ばれる富士銀行や三和銀行、第一勧業銀行などの都市銀行を中心とした6大企業集団に再編された。富士銀行は安田・浅野・大倉財閥を源流とし、渋沢財閥を源流に持つ第一勧業銀行と共にみずほファイナンシャルグループを形成する。山口・鴻池から成る三和銀行は東海銀行と合併しUFJ銀行となり、三菱に吸収される。

上記における「財閥」と「企業集団」の違いは株式所有構造にある。「財閥」では創業者一族を頂点として、創業者一族→持株会社→財閥直系企業→その子会社・孫会社のような構造を成す。戦後の「旧財閥系企業集団」では、直系企業の間での株式持合いにより企業買収を防いだ。また、技術者を創業者とするトヨタや日立などは、親会社を頂点とするピラミッド構造である。さらには、都市銀行を中心とし、業種がかぶらないように構成された「新興系企業集団」も株式持合い構造に分類されるだろう。



また、財閥企業として旭硝子・キリン・ニコンが三菱グループ、NECが住友グループ、東芝が三井に源流を持つことは、個人的に意外であった。

今後深堀したい話題として、総合商社の実態がある。総合商社はGHQによりかなり危険視されていたらしく、三菱商事・三井物産の解体は苛烈を極め、部長級以上は同一企業において2人以上の所属が禁止され、一般社員でも同一企業に100人以上で所属出来なかった。これらは、総合商社がいかに日本の産業をコントロールしていたかを感じさせる。現在の総合商社も世界的にかなり際立った存在で、これほど手広く事業を展開する企業は日本の総合商社以外に無いことはよく知られている。
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