「メガバンクの実力」のまとめ

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日本経済新聞において、2012年6月18日から6月22日まで連載していた「メガバンクの実力」のまとめ。

欧米銀行の失速と共に、世界で存在感を増しているように見えるメガバンク。それを、資産規模・収益力・市場価値、またいかなるリスクを抱えているのか、さらに規制強化(バーゼル3)は邦銀にどう影響するのかという視点から議論している。

資産規模

資産規模の世界ランキング (2012年3月31日)
 順位. 銀行名 (国)単位:10億ドル
1. Deutsche Bank (Germany)2,805.50
2. Mitsubishi UFJ Financial Group (Japan)2,641.22
3. HSBC Holdings (UK)2,637.22
4. Industrial & Commercial Bank of China (China)2,607.75
5. BNP Paribas (France)2,545.34
14. Mizuho Financial Group (Japan)1,995.57
17. Sumitomo Mitsui Financial Group (Japan)1,726.21

3月末での三菱UFJファイナンシャルグループの資産規模は2.6兆ドルで世界最大のドイツ銀行に迫り、邦銀の国際市場での与信残高(~貸出残高)も米英に次いで3位となっているとのこと。この結果は、信用リスクの低い国債保有を増やしたためと、危機下にある欧州銀が規模縮小を進めているためだという。

規模の追求の是非については、銀行側からの「多角化を伴う規模拡大は利点が多い」という意見と、規制当局側による「規模が大き過ぎると管理できなくなる」との考えが対立している。

収益力

また邦銀の収益力は、バブル崩壊後から低いままである。それは、国内の金利の低さに原因がある。実際、邦銀の利ざや(=貸出金利-預金金利)は1.42%(預金金利を0%とした)で、一方米銀は、利ざやが3.52%である。そのため邦銀は、利ざやの大きい海外業務を手がける必要があるが、そのような先端業務を手がけられるバンカーは育ってないらしい。

現在の邦銀が持つリスクは、バブル後の不良債権に変わって国債にシフトしつつある。邦銀はかつての反省から、中小企業向け融資を絞ってきた。それに代わって国債を保有するようなり、現在のメガバンクの国債の比率は20%に達する。この国債保有により、邦銀のリスクの度合いは国の財政政策に依存することになってしまっている。

市場価値

株式の時価総額の世界ランキング (2012年1月20日)
 順位. 銀行名 (国)単位:10億ドル
1. Industrial & Commercial Bank of China (ICBC) (China)240.95
2. China Construction Bank (China)195.85
3. Wells Fargo & Co (US)160.72
4. HSBC Holdings (UK)150.9
5. Agricultural Bank of China (China)141.73
16. Mitsubishi UFJ Financial (Japan)64.25
29. Sumitomo Mitsui Financial (Japan)43.62
35. Mizuho Financial Group (Japan)35.82

邦銀の市場評価は低いままである。

一因として、日本経済の低迷とデフレによる企業の資金調達意欲の低下が挙げられる(デフレはお金の価値が上昇する現象であるから、借りる立場からすれば金利にデフレの影響が上乗せされる)。

もう1つの要因としては、資本力が足りないことがある。中でも、邦銀の中核的自己資本(普通株などの優良な資本)は6%~9%程度で、米国の優良行に比べ見劣りする。

規制強化の影響

バーゼル委員会の制度改革は、邦銀の力を大きく左右する。邦銀にとってのプラスに働くのは、2015年から始まる流動性規制である。これは、銀行に流動性の高い資産保持を求める規制で、邦銀の豊富な預金はこれへの備えが万全とのこと。

一方、マイナスに作用する短期売買(トレーディング)の見直しがある。邦銀は銀行勘定(銀行自身が持つお金)での国債の短期売買で利益を出していたらしく、これが見直されると邦銀の利益はかなり落ちるとのこと。

また、市場リスクの評価方法について、従来までのリスク分析法:バリュー・アット・リスクに加え、期待ショートフォールという想定外の危機が起こったときのリスクも算出するよう求められるという。この新指標の適用により、邦銀の持つ株式や債権のリスクの評価が変わる可能性があり、それは今後の邦銀の行方に影響を与えるだろう。
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