陽だまりの彼女 新潮文庫 (2011/05/28) 越谷 オサム ★★☆☆☆ 商品詳細を見る |
現実的生活を送る二人の、微笑ましくも濃密で愛情表現豊かな恋愛小説。
苦くも濃密な中学時代を共に過ごした幼馴染(女子)に、主人公(男子)は十年ぶりに再開する。美しくできる女に変身した彼女との、愛情豊かな生活がすぐに始まる。
互いに信頼し合い、与え合う2人は、現代的な大人の恋愛の良い形態であるかもしれない。また、本書の8割を占める、2人の男女のやりとりは、瑣末だけれども心和ませるものだ。
しかしこの物語では、恋愛小説というだけでない、それを超えた重大な彼女の秘密が存在する。この秘密は物語の枠組みを与え、また彼女そのものを構成する土台となっているものだ。
だがそれは、読者がページを括る手を休ませないよう設定されたもので、決して読了感を損ねるものではない。そんな構造的な枠組みを持ちながらも、心穏やかにさせてくれる物語である。
また、この種のどんでん返し、構造を持つ恋愛小説として『イニシエーション・ラブ』があったなあと思い出す。
上記のごとく、長々と説明を加えましたが、読んで楽しい本ですが、別に大したことはない本です。
ただ、この本の帯の「女子が男子に読んでほしい恋愛小説 No.1」との文句が気になってしまい、思わず購入してしまいました。この帯の文句は、仕事が出来る彼女を正当に評価し、精一杯愛情を注ぐ主人公に日本男児は見習ってほしいというようなことに由来すると想像します。
女性編集者の意見なのかは知りませんが、どの日本男児だって、こんなに身持ちが堅く、愛らしい上に美しく、頭のいい女性であれば、主人公のようにその女性を幸せにするために一生を捧げようと思うはずです。
ちょっと苦言を呈してしまいましたが、これは男女の付き合いが、互いの価値を測り、その優劣によって与え・与えられるがコントロールされるものであるからには仕方がない事です。世の女性、若しくは男性も、自分の市場価値より劣ったパートナーを持てば、よりパートナーが「与えてくれる」可能性が高まるはずです。でもまあ、いい本です。
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