養鶏場の話

ウィキペディア:養鶏

ここ最近、都市伝説がらみのエッセイ『怖い話 (幻冬舎文庫)』を読んでいるからか、昔の友人に聞いた話を思い出した。その話はけっして都市伝説ではなく、その友人自身が体験したこととして私は聞かされたが、別にその存在を確認したわけではない。それは養鶏場でバイトをしたという話で、真実であればなかなかハードな体験である。


鳶の仕事をしていた友人Tは、仕事終わりにいつものように会社の連中と飲みに行ったという。鳶の仲間とあまり折り合いの良くなかったTは、仲間が騒いでいるのをよそに、隣の席に座った30代位の男と話をしていた。

その男は、自身の武勇伝ばかりを話すつまらないやつだったが、養鶏場の社員として月に70万円以上稼いでいると言っていた。そして男は、「バイトでも1日8時間の労働、残業なしで3万円ほどは稼げる」と言い、Tはそのバイトに誘われたという。女遊びに夢中になっていて金が必要だったTは、すくに承諾した。

その職場は意外なほど自宅から近く、私自身もそれを聞いてあれがそうなのかと思ったほどだった。その仕事は鶏の屠殺で、宇宙服のような完全防備の服装で行う。百メートル四方ほどの部屋に鶏が何百匹といて、それを一羽づつ殺していくという。

Tが仕事の先輩に教わったところでは、単に鶏の首を持ちポキッと捻るだけで殺せるらしい。しかし、初心者でそれがままならない場合は、鶏の首を持ちそれを上に振り上げて体を叩きつけて殺す。

Tも首を捻る方法を試してみたらしいが、暴れまわる鶏にとてもそんな簡単にはいかない。鶏を打ち付ける方法で殺していたTだったが、だんだん気持ち悪くなってきたという。

「宇宙服」なる全身を覆う作業着を着ていてでさえ、耐えられないような悪臭が充満してくるらしく、ついにTはその「宇宙服」のなかでもどしてしまったという。その服のなかで溺れそうになり大変だったらしいが、先輩も心配し早退が許された。それですぐに仕事は辞めてしまったらしいが、お金はきっちりもらえたらしく、いい経験として私に語っていた。
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