穴らしきものに入る 角川ホラー文庫 (2011/10/25) 国広 正人 ★★☆☆☆ 商品詳細を見る |
第18回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作『穴らしきものに入る』を含む短篇集。どれもいいアイデアだが、1つのアイデアのみで突っ走り、展開が少なく、飽きてくる話が多い。一話一話をもっと短くしたほうがいいかもしれない。
穴らしきものに入る
★★★☆☆突然「穴」に入る能力を身につけた主人公が、様々な「穴」に挑戦していく話。それは、ホース、電車のつり輪から、女性のあれまでどんどんエスカレートしていく。
コミカルな奇妙な話といった趣の短編で、最後まで一気に読ませる。
金骨
★☆☆☆☆死んだ父親の骨を拾いに火葬場へ行ったら、骨が金だったという話。
それを奪い合う親族たちがコミカルに描かれるが、展開に波がなく飽きてくる。
よだれがでそうなほどいい日陰
★★☆☆☆日なたを異様に怖がる女性の話。その女性のサイコな人格が幼少期まで遡って詳しく描かれる。
個人的には、この主人公結構好き。
エムエーエスケー
★★☆☆☆朝起きると、顔にマスクが・・・。脱いでも脱いでも違うマスクが出てくるのみ。そんな感染性疾患のパンデミックが起こる話。
病気にかかった夫と妻のやり取りがなかなかよかった。
赤子が一本
★★★☆☆「7が揃えば大当たり。当たりが出れば・・・赤ちゃん一本プレゼント」。赤子が当たる景品付き自動販売機をめぐる、子のない夫婦の物語。
子を強く望む妻と、それを気遣う夫との2人の生活を軸に話は進む。景品を当てたことのある婆さんが出てきたりとホラーな展開もあるが、総じてほのぼのとしている。ラストの描写は、なかなか恐ろしい映像を想起させるが、ここでも「にぎにぎ」といった表現がその怖さを半減させている。
何か意図的にホラー色を薄めようとしているかのような書き方があるが、それも悪くないと思った。