あげくの果て 曽根 圭介 著

あげくの果て
(2008/10/25)
曽根 圭介
★★★★★
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第14回日本ホラー小説大賞短編賞、第53回江戸川乱歩賞受賞作家による、過剰に演出された世界の、完璧に練り上げられたトリッキーな3短編。

あげくの果て

熱帯夜

★★★★☆
災厄の渦中にいる3人の男女の物語と、妹を連続殺人鬼に殺された女の物語が、幾重にも仕掛けられたトリックにより一つの物語に収束していくミステリー。

時間軸の操作や読み手の感情移入などを利用した様々な仕掛けに脱帽です。更に、50ページほどの短編ながらも心理描写もしっかりとしています。そして何より、物語の収束の手際の良さが圧巻でした。

あげくの果て

★★★★☆
経済的な没落、極度に進行した高齢化、そして猛烈な格差に喘ぐ未来の日本。そこは、死体で溢れかえり、世代間で殺し合う地獄と化していた。その世界の一つの家族が、暴力と災厄に巻き込まれ堕ちていく、あげくの果ての物語。

日本の未来の最悪なケースを、装飾的に描いた作品と言えるかもしれません。グロテスクな世界構築のうまさもさることながら、並列に進むバラバラの物語を一つの物語に融合していく本著者の手法は、既に完成されていると言えるでしょう。

最後の言い訳

★★★★★
世界に僅かに現れた“蘇生者”と呼ばれる生き返った者たち。初めは、普通の人々と何ら変わらず、人類と“蘇生者”は共存していけるはずだった。しかし、彼らの人肉を求める強い衝動とその感染性の強さは、次第にその均衡を崩していく。

ゾンビものに、新風を送り込んだ驚異の作品です。ゾンビものと言えばだいたい相場は決まっていて、何十年もマイナーチェンジだけに留まっていました。それがこんな形で為されるとは、思いもよりませんでした。ゾンビものの革命とも言える作品ですが、人間物語もこのフワッとしたラストもまた最高です。
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