100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 春日 真人 著

100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (新潮文庫)100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影
新潮文庫
(2011/05/28)
春日 真人
★★★★☆
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宇宙はどのような形をしているのだろう?無限に広がっているのだろうか?それとも何らかの形があって端があるのだろうか?この問題の解決に繋がる『ポアンカレ予想』という、一つの数学の問題がある。それは
単連結な3次元閉多様体は3次元球面に同相である。
という命題で、人類最後の万能の天才、アンリ・ポアンカレ(1854 – 1912)によって提起された。

この問題はその重要性にもかからわらず、100年以上も未解決であり、多数の数学者たちの目標でもあったが、同時に彼等を苦しめる問題でもあった。しかし2003年、問題はロシアの数学者グリゴリ・ペレリマンによって解かれた、専門の数学者たちさえも全く理解できない、物理学さえも含む様々な手法を駆使して。

その学問を横断するほどの天才に対して、数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞と100万ドルの賞金が贈られる・・・はずだった。しかし彼は受賞を辞退、賞金さえも受け取らずに数学界と縁を切り隠遁してしまう。本書は、『ポアンカレ予想』の平易な解説、そしてその問題を巡る様々な数学者の歴史を述べると共に、問題を解いたペレリマンが隠遁した理由に迫ったノンフィクションである。



数学的概念が深入りせず直感的に書かれているので、科学とは無縁の人には、『ポアンカレ予想』と関連する数学の雰囲気を味わうのに、さらに数学者とは何を考え、どんな人生を送るのかを知るのに格好の本だと思います。

しかし、数学の監修の不十分さがかなり目に付きます。まずは、「実際の宇宙の形はどのようなものなのか?」という問題と「3次元閉多様体の取り得る形は、何があり、どのように分類できるのか?(幾何化予想)」という数学的事実の関係を整理していないということがあります。さらには、『幾何化予想』の一部である『ポアンカレ予想』は、3次元閉多様体の取り得る形のどの場合に対応するのかについても言及がありません。

一方、ハードサイエンスに触れ、ペレリマンの証明を理解してやろうという人にとっては、ペレリマンの証明のアウトラインさえも載っていないので、内容不足です。

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